青色申告と白色申告の違い|フリーランスはどっちを選ぶべきか

独立して最初に迷うことのひとつが「青色申告と白色申告、どっちで申告すればいいの?」という問題です。「青色のほうが節税になるらしい」「でも帳簿が難しそう」「白色なら楽なの?」と、ネットの情報を読むほど判断がつかなくなる人も多いはずです。

この記事では、独立を考えている/独立したばかりのITエンジニア・デザイナー・クリエイター向けに、青色申告と白色申告の違いを国税庁の公式情報をもとに整理します。あわせて、令和9年分(2027年分)から青色申告特別控除のしくみが変わる点も解説します。

結論:事業として継続的に収入を得るフリーランスなら、基本は「青色申告+会計ソフト+e-Tax」がおすすめしやすい選択です。白色申告でも帳簿付けと保存は義務なので「白色なら記帳不要」というわけではありません。青色申告には最高65万円(令和9年分以後は条件により最高75万円)の特別控除や赤字の繰越しなどの特典があり、手間の差に比べて受けられるメリットが大きいためです。ただし、承認申請書の提出期限があるので早めの準備が必要です。

青色申告と白色申告の違いを一覧で比較

まずは全体像です。どちらも「個人事業の所得を計算して確定申告する方法」で、事前に税務署へ届け出て承認を受けたものが青色申告、届け出をしていない場合が白色申告になります。

項目青色申告白色申告
事前の手続き「青色申告承認申請書」の提出が必要不要
帳簿付け原則は正規の簿記(一般的には複式簿記)。簡易な帳簿も可必要(日々の合計額をまとめて書くなど簡易な方法も可)
特別控除最高65万円/55万円/10万円(令和8年分まで)なし
赤字の繰越し純損失を原則3年間繰り越せる原則として不可(一定の損失を除く)
家族への給与届出の範囲内で適正な額を「青色事業専従者給与」として経費にできる「事業専従者控除」(配偶者86万円、その他の親族1人50万円が上限)
少額減価償却資産の特例一定の要件を満たす青色申告者が使える使えない
帳簿の保存期間帳簿・決算関係書類は原則7年(請求書・見積書・納品書などは5年)法定帳簿は7年、領収書・請求書などは5年

表を見ると分かるように、白色申告は「手続きが不要」なだけで、帳簿付けと保存の義務はあります。国税庁の記帳・帳簿等保存制度では、事業所得などがある人は白色申告でも収入や経費を記帳し、帳簿を保存することが求められています。

青色申告の主なメリット

メリット1:青色申告特別控除で課税される所得が減る

青色申告のいちばん大きなメリットは「青色申告特別控除」です。これは売上から経費を引いた所得から、さらに一定額を差し引ける制度です。差し引いた分だけ所得税・住民税などの計算のもとになる所得が小さくなります。

令和8年分(2026年分。2027年2〜3月に申告する分)までの控除額と主な条件は次のとおりです。

控除額主な条件
65万円下の55万円の条件を満たし、さらに「e-Taxで申告」または「優良な電子帳簿の要件を満たして仕訳帳・総勘定元帳を電子保存(届出書の提出が必要)」のどちらか
55万円事業所得などがあり、正規の簿記(一般的には複式簿記)で記帳。貸借対照表・損益計算書などを申告書に添付し、期限内に申告
10万円上記の条件を満たさない青色申告者

ポイントは「期限内申告」が条件に入っていることです。国税庁によると、還付を受ける申告であっても、55万円・65万円の控除を受けるには確定申告期限(原則として翌年3月15日)までに提出する必要があります。期限を過ぎると控除額が10万円まで下がってしまう点に注意しましょう。申告期限についてはフリーランスの確定申告はいつからいつまで?でも解説しています。

メリット2:赤字を3年間繰り越せる

青色申告では、事業で出た赤字(純損失)を原則として翌年以後3年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます。前年も青色申告をしていれば、前年分の所得税の還付を受ける「繰戻し」を選ぶこともできます。

独立1年目は、PCや周辺機器の購入、開業準備の出費で赤字になることも珍しくありません。翌年以降に売上が伸びたときに、その赤字を差し引けるのは心強い仕組みです。

メリット3:家族への給与を経費にしやすい

配偶者や家族が事業を手伝っている場合、青色申告なら「青色事業専従者給与」として、届け出た範囲内で労務の対価として相当な給与を必要経費にできます。原則としてその年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合などはその日から2か月以内)に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。

白色申告にも「事業専従者控除」がありますが、配偶者は86万円、それ以外の親族は1人50万円が上限です(所得を専従者の数+1で割った額のほうが低ければその額)。なお、専従者として給与や控除の対象にした家族は、配偶者控除や扶養控除の対象にはできません。

メリット4:少額の備品をまとめて経費にできる特例

一定の要件を満たす青色申告者は「中小企業者の少額減価償却資産の特例」を使えます。国税庁の情報によると、令和8年4月1日から令和11年3月31日までに取得した10万円以上40万円未満の資産(令和8年3月31日までの取得分は30万円未満)を、年間合計300万円までその年の経費にできます。

通常、10万円以上のパソコンなどは数年かけて少しずつ経費にする「減価償却」が必要ですが、この特例を使えば購入した年にまとめて経費にできます。仕事道具に投資するエンジニアやクリエイターには関係の深い制度です。

令和9年分(2027年分)から青色申告特別控除が変わる

令和8年度税制改正により、令和9年分以後の所得税から青色申告特別控除の区分が見直されます。国税庁のリーフレットと財務省の「令和8年度税制改正の大綱」で確認できる主な変更点は次のとおりです。

区分令和8年分まで令和9年分以後
複式簿記+e-Taxで期限内申告65万円65万円
上記に加え、優良な電子帳簿の要件を満たす(請求書データ等との自動連携、訂正・削除履歴の記録など一定の要件)65万円75万円
複式簿記だがe-Taxを使わない(書面で提出)55万円65万円の区分の対象外(e-Taxが要件に追加)
簡易な帳簿・前々年の収入金額1,000万円以下10万円10万円
簡易な帳簿・前々年の収入金額1,000万円超10万円対象外(控除なし)

つまり、令和9年分以後はe-Taxを使うかどうかで控除額に大きな差がつくようになります。これから独立する人は、最初から会計ソフトで複式簿記の帳簿をつけ、e-Taxで申告する前提で準備しておくのが現実的です。

令和9年分以後の新しい区分の細かい要件(75万円の対象となる電子帳簿の条件など)は、今後の国税庁の案内で具体化される部分もあります。申告の前に国税庁の最新情報を確認してください。住民税については令和10年度分以後に適用されると解説されています。

白色申告のほうが向いているケース

青色申告のメリットは大きいですが、次のようなケースでは白色申告でも困らないことがあります。

  • 副業の収入がごく少なく、事業として続けるかまだ決めていない
  • 経費がほとんどなく、控除や赤字の繰越しを使う場面が少ない
  • 今年の承認申請の期限をすでに過ぎてしまった(翌年から青色に切り替える準備期間にする)

ただし、何度も書いているとおり白色申告でも記帳と帳簿の保存は必要です。会計ソフトを使えば、青色申告に必要な複式簿記の帳簿も、日々の取引を入力するだけで作れるものが多くあります。「白色なら楽」というより「手間はそれほど変わらず、もらえる特典が少ない」と考えたほうが実態に近いでしょう。

なお、副業の所得が「事業所得」ではなく「雑所得」にあたる場合、青色申告の対象にはなりません。青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得がある人です。副業の扱いに迷う場合は税務署や税理士に相談しましょう。

青色申告を始めるための手続きと期限

青色申告をするには、所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。提出期限は次のとおりです。

ケース提出期限
すでに事業をしていて、今年から青色申告にしたい青色申告をしようとする年の3月15日まで
その年の1月16日以後に新しく開業した業務を開始した日から2か月以内

たとえば会社を辞めて10月1日に開業した場合、その年から青色申告にするには原則として11月末ごろまでに申請書を出す必要があります。期限を過ぎると、その年は白色申告になり、青色申告は翌年分からになります。開業届と一緒に出しておくと忘れにくくなります。

申請書を出したあとに必要な準備は次のとおりです。

  • 会計ソフトを選び、事業用の取引を入力できる状態にする
  • 事業用の銀行口座・クレジットカードをできるだけプライベートと分ける
  • 請求書・領収書・レシートなどを保存するルールを決める(電子データの保存方法も確認)
  • e-Taxで申告するためにマイナンバーカードなど必要なものを準備する

迷ったときの判断基準

最後に、どちらを選ぶか迷ったときの考え方をまとめます。

  • 本業として独立する・独立予定:青色申告を選び、会計ソフト+e-Taxで申告する前提で準備する
  • 副業で事業として継続的に収入がある:青色申告を検討。所得区分(事業所得か雑所得か)は事前に確認
  • 副業の収入がわずかで様子見:白色申告でも可。ただし記帳と保存は必要
  • 家族が事業を手伝っている:青色事業専従者給与の届出もあわせて検討

青色申告の手間の中心は「複式簿記の帳簿付け」ですが、銀行口座やクレジットカードと連携できる会計ソフトを使えば、仕訳の多くを自動で取り込めます。手間とメリットを比べて、自分の働き方に合ったほうを選びましょう。

まとめ

  • 青色申告は事前の承認申請が必要。白色申告は申請不要だが、記帳と帳簿の保存は義務
  • 青色申告特別控除は令和8年分まで最高65万円。期限内申告が条件
  • 令和9年分以後は「複式簿記+e-Tax」で65万円、さらに優良な電子帳簿の要件を満たすと75万円。e-Taxを使わない場合は65万円の区分の対象外に
  • 青色申告なら赤字を原則3年間繰り越せる
  • 承認申請書の期限は原則3月15日、1月16日以後の開業は開業日から2か月以内
  • 事業として独立するなら、会計ソフト+e-Taxでの青色申告を前提に準備するのが現実的

参考にした公式情報

※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。最新情報は公式サイトでご確認ください。個別の判断は税理士や専門家にご相談ください。

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