フリーランスとして独立すると、最初にぶつかるのが「帳簿づけと確定申告をどうするか」という問題です。会社員時代は経理部や年末調整がやってくれていたことを、これからは自分でやる必要があります。
調べてみると、クラウド会計ソフトはfreee(フリー)、マネーフォワード、弥生の3社がよく名前に挙がります。ただ、どれも「かんたん」「自動」とうたっていて、正直どれを選べばいいのか分からない…という方も多いのではないでしょうか。
この記事では、3社の公式サイトに掲載されている料金とプランの違いをもとに、フリーランス1年目の人が何を基準に選べばよいかを整理します。特定のソフトを一方的におすすめするのではなく、あなたの状況に合わせて判断できるよう、比較のポイントを中心に解説します。
会計ソフトを使うと何がラクになるのか
そもそも、なぜ会計ソフトが必要なのでしょうか。理由は大きく3つあります。
1. 複式簿記の知識がなくても帳簿がつけられる
青色申告で最大の控除(65万円・55万円)を受けるには、「正規の簿記の原則」、一般的には複式簿記で記帳する必要があります(国税庁 タックスアンサーNo.2072)。複式簿記は「借方・貸方」で取引を記録する方法で、独学だと少しハードルが高めです。会計ソフトなら、「何に・いくら払ったか」を入力するだけで、裏側で複式簿記の形に整えてくれます。
2. 銀行口座・クレジットカードの明細を取り込める
3社とも、銀行やクレジットカードの明細を自動で取り込む機能を案内しています。1件ずつ手入力する手間が減り、入力漏れも防ぎやすくなります。事業用の口座とカードを分けておくと、さらに整理がラクになります。
3. 確定申告書の作成とe-Tax提出までつながる
日々の記帳データから、決算書(青色申告決算書)や確定申告書を作成し、e-Tax(電子申告)で提出するところまでソフト上で進められます。確定申告の時期や流れは、フリーランスの確定申告はいつからいつまで?もあわせて参考にしてください。
青色申告65万円控除の条件をおさらい
会計ソフト選びとセットで知っておきたいのが、青色申告特別控除の条件です。国税庁のタックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)によると、控除額は65万円・55万円・10万円の3段階です。
| 控除額 | 主な条件(要約) |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件をすべて満たしたうえで、①e-Taxで申告書・貸借対照表・損益計算書等を期限内に送信する、または②仕訳帳と総勘定元帳を「優良な電子帳簿」の要件を満たして電子保存し、届出書を提出する |
| 55万円 | 事業所得等があり、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを添付して期限内に申告する |
| 10万円 | 青色申告者で、上記の条件を満たさない場合 |
つまり、複式簿記で記帳して、e-Taxで期限内に提出するのが、多くのフリーランスにとって65万円控除への現実的なルートです。3社のソフトはいずれも確定申告書の作成とe-Taxに対応しているので、「どのソフトなら65万円控除が受けられるか」で迷う必要はあまりありません。
青色申告と白色申告の違いについては、青色申告と白色申告の違い|フリーランスはどっちを選ぶべきかで詳しく解説しています。
3社の料金プランを比較(公式情報・税抜)
ここからは、2026年10月時点で各社の公式ページに掲載されている個人向けプランの料金をまとめます。表示はすべて税抜です。年払いのほうが割安なプランが多いので、年額を中心に比較しています。
freee会計(個人事業主向け)
| プラン | 年額払い | 月額払い | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| スターター | 11,760円 | 1,780円 | 消費税申告は不可。ファイルボックスは月5枚まで |
| スタンダード | 23,760円 | 2,980円 | 消費税申告に対応。資金繰りレポートなど |
| プレミアム | 39,800円 | 年払いのみ | 電話サポート、税務調査サポート補償など |
※Web版で契約した場合の料金です。アプリ版で購入する場合は料金が異なります(公式ヘルプに税込価格の記載あり)。このほか、記帳代行がつく「入力おまかせ」プランもあります。
マネーフォワード クラウド確定申告(個人向け)
| プラン | 年払い(年額) | 月払い | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| パーソナルミニ | 10,800円 | 1,280円 | 確定申告書作成・電子申告、明細の自動取込。消費税申告は不可 |
| パーソナル | 15,360円 | 1,680円 | 消費税申告(インボイス対応)、電子ファイル保存数の上限なし |
| パーソナルプラス | 35,760円 | 年払いのみ | 電話サポート(操作方法)、レシート撮影は月100件まで |
※公式ページには、2026年12月に料金体系の一部改定が予定されている旨の記載があります。契約前に最新の料金を確認してください。
やよいの青色申告 オンライン
| プラン | 初年度 | 次年度以降(年額) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| セルフプラン | 1年間無料(キャンペーン) | 11,800円 | WebFAQなど。電話サポートなし |
| ベーシックプラン | 1年間無料(キャンペーン) | 22,800円 | 電話・メール・チャットサポート(電話は契約期間中10回まで) |
| トータルプラン | 19,800円(1年間半額) | 39,600円 | 仕訳相談・確定申告相談など |
※弥生は「全プランで製品機能は同じ」とされ、違いはサポート内容です。初年度のキャンペーンは自動更新の決済方法の登録が条件で、1事業者につき1回のみ、申込期限は2027年3月15日と案内されています。
比較のポイント1:1年目と2年目以降の「総額」で見る
料金を比べるときは、1年目だけでなく2年目以降も含めた総額で考えるのがおすすめです。会計ソフトは毎年使い続けるもので、途中で乗り換えるとデータ移行や操作の覚え直しが必要になるからです。
たとえば最安クラスのプラン(年額・税抜)を並べると、次のようになります。
- freee会計 スターター:年11,760円
- マネーフォワード パーソナルミニ:年10,800円
- やよいの青色申告 オンライン セルフプラン:初年度無料、次年度以降は年11,800円
最安プラン同士なら年額の差は1,000円程度で、大きな差はありません。弥生は初年度のキャンペーンがあるぶん、1年目の負担が軽くなります。ただし、次に説明する「消費税申告」が必要かどうかで、選ぶべきプランが変わる点に注意してください。
比較のポイント2:インボイス登録しているなら消費税申告の対応を確認
取引先の求めなどでインボイス(適格請求書発行事業者)の登録をしている場合、原則として消費税の申告が必要になります。ここが会計ソフト選びでつまずきやすいポイントです。
| ソフト | 消費税申告ができる個人向けプラン(公式情報より) |
|---|---|
| freee会計 | スタンダード以上(スターターは不可) |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | パーソナル以上(パーソナルミニは不可) |
| やよいの青色申告 オンライン | 全プランで製品機能は同じ(消費税申告書の作成機能あり、2割特例に対応) |
インボイス登録をしている人がfreeeやマネーフォワードを選ぶ場合、最安プランではなく1つ上のプランが必要になります。その場合の年額(税抜)は、freeeスタンダードが23,760円、マネーフォワードのパーソナルが15,360円です。弥生はセルフプランでも機能は同じとされていますが、電話で相談したい場合はベーシックプラン(次年度以降22,800円)が候補になります。
比較のポイント3:サポートの受け方と使いやすさ
電話サポートが必要か
1年目は「この支出はどの勘定科目?」「この画面の操作が分からない」といった疑問がたくさん出てきます。電話で質問したい人は、電話サポートの有無を確認しましょう。
- freee会計:電話サポートはプレミアム以上
- マネーフォワード:電話サポート(操作方法)はパーソナルプラス
- 弥生:電話・メール・チャットサポートはベーシックプラン以上(仕訳や確定申告の相談はトータルプラン)
サポートの範囲は「ソフトの操作方法」と「仕訳や税金の相談」で分かれていることがあります。どこまで聞けるのかは各社の公式ページで確認してください。なお、個別の税務判断が必要な場合は、税理士への相談も検討しましょう。
画面の使いやすさは無料期間で試す
使いやすさは人によって感じ方が違うため、実際に触ってみるのが一番です。各社とも無料で試せる仕組みを用意しています。
- freee会計:スターター・スタンダード・プレミアムにお試しプランあり(お試し期間後は機能が制限される)
- マネーフォワード:1か月の無料トライアル(1事業者1回のみ、有料プランへの自動移行はなし)
- 弥生:無料体験プランは最大2か月(決算・申告機能は使えない)
可能であれば、確定申告の直前ではなく、独立してすぐ、または今のうちに試しておくのがおすすめです。実際の取引を数件入力してみると、自分に合うかどうかが判断しやすくなります。
タイプ別:フリーランス1年目の選び方の目安
ここまでの比較をもとに、状況別の考え方をまとめます。あくまで公式情報の料金・機能にもとづく目安なので、最終的には無料期間で操作感を確かめて決めてください。
| こんな人 | 検討しやすい選択肢 |
|---|---|
| インボイス未登録で、とにかく費用を抑えたい | 3社の最安プラン(freeeスターター/MFパーソナルミニ/弥生セルフ)。1年目の費用重視なら弥生の初年度無料キャンペーンも候補 |
| インボイス登録済みで、消費税申告もしたい | freeeスタンダード/MFパーソナル/弥生(全プラン同機能)。料金表で年額を比較 |
| 電話で操作方法を聞きたい | freeeプレミアム/MFパーソナルプラス/弥生ベーシック以上 |
| 仕訳や確定申告の相談もしたい | 弥生トータルプランなど、相談範囲が明記されたプラン。または税理士への依頼も検討 |
開業届をまだ出していない人は、あわせて開業届は出すべき?副業エンジニア・デザイナー向けの判断基準もチェックしておくと、独立準備がスムーズです。
まとめ
- freee・マネーフォワード・弥生はいずれも青色申告とe-Taxに対応しており、65万円控除を目指せる
- 65万円控除の主な条件は「複式簿記での記帳」と「e-Taxによる期限内提出」など(国税庁タックスアンサーNo.2072)
- 最安プラン同士の年額差は小さい(税抜で年10,800円〜11,800円程度)。弥生は初年度無料キャンペーンあり
- インボイス登録している人は、freeeはスタンダード以上、MFはパーソナル以上が必要
- 電話サポートの有無と範囲はプランによって違う
- 最終的には無料期間で実際に入力してみて、使いやすいものを選ぶ
参考にした公式情報
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- freee ヘルプセンター「[個人] freee会計のプランについて」
- マネーフォワード クラウド確定申告「料金・プラン」
- 弥生「やよいの青色申告 オンライン 料金・プラン」
- 弥生「インボイス制度に対応できる青色申告ソフト」
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。最新情報は公式サイトでご確認ください。個別の判断は税理士や専門家にご相談ください。
