「青色申告にすると65万円も控除されるらしい。でも、e-Taxが条件ってどういうこと?」「紙で出したら損をするの?」——独立したばかりのエンジニアやデザイナーからよく聞く疑問です。
青色申告特別控除は、条件を満たすかどうかで控除額が65万円・55万円・10万円と大きく変わります。しかも、その分かれ目は「帳簿のつけ方」と「提出方法」と「提出日」という、ちょっとした手続きの違いです。この記事では、国税庁の公式情報をもとに、65万円控除を受ける条件とe-Taxで確定申告する方法を、はじめての方にもわかるように整理します。あわせて、令和9年分(2027年分)以後に予定されている制度の見直しについても紹介します。
青色申告特別控除とは?65万円・55万円・10万円の違い
青色申告特別控除は、青色申告をしている個人事業主が、所得(売上から経費を引いたもの)からさらに一定額を差し引ける制度です。所得が小さくなるので、所得税だけでなく住民税なども軽くなる可能性があります。
国税庁のタックスアンサー(No.2072)によると、控除額は次の3段階です。
| 控除額 | 主な条件 |
|---|---|
| 65万円 | 55万円の条件をすべて満たし、さらに「e-Taxで提出」または「優良な電子帳簿で保存」のどちらかを満たす |
| 55万円 | 事業所得(または不動産所得)があり、複式簿記で記帳し、決算書類を添付して期限内に提出する |
| 10万円 | 青色申告者で、上の条件に当てはまらない場合 |
つまり、65万円と55万円の差は「提出方法(または帳簿の保存方法)」だけ。複式簿記で帳簿をつけているなら、e-Taxで出すだけで控除額が10万円増えることになります。
そもそも青色申告と白色申告の違いがよくわからない方は、先に青色申告と白色申告の違い|フリーランスはどっちを選ぶべきかをご覧ください。
65万円控除を受けるための5つの条件
現行制度で65万円控除を受けるための条件を、チェックリスト形式でまとめます。
条件1:青色申告の承認を受けている
前提として、税務署に「青色申告承認申請書」を提出し、青色申告の承認を受けている必要があります。提出期限を過ぎると、その年は白色申告になってしまうので注意しましょう。期限と書き方は青色申告承認申請書の期限と書き方で解説しています。
条件2:事業所得(または不動産所得)がある
青色申告特別控除の55万円・65万円は、事業所得または不動産所得を生ずる事業を営んでいる人が対象です。フリーランスとして開業し、本業として仕事をしている場合は通常「事業所得」になります。
条件3:正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳している
「正規の簿記の原則」とは、一般的には複式簿記のことです。複式簿記は「何に使ったか」と「どこからお金が出たか」の両面を記録する方法で、手書きだと大変ですが、会計ソフトを使えば取引を入力するだけで帳簿が作られます。なお、「現金主義による所得計算の特例」を選んでいる人は55万円(=65万円も)の控除を受けられません。
条件4:決算書類を添付して期限内に提出する
確定申告書に貸借対照表・損益計算書など所得金額の計算に関する明細書を添付し、確定申告期限(翌年3月15日)までに提出する必要があります。国税庁によると、還付申告(税金が戻ってくる申告)の場合でも、期限内の提出が必要です。
条件5:e-Taxで提出する、または優良な電子帳簿で保存する
最後に、次のどちらかを満たすと55万円が65万円になります。
- e-Taxで提出:確定申告書と貸借対照表・損益計算書などを、提出期限までにe-Taxで送信する(決算書を画像データで送る方法は不可)
- 優良な電子帳簿で保存:仕訳帳と総勘定元帳を「優良な電子帳簿」の要件を満たして電子データで保存し、期限までに所定の届出書を出す
優良な電子帳簿は、訂正・削除の履歴が残るなどの要件を満たすシステムが必要で、届出も求められます。はじめての確定申告なら、まずはe-Taxで提出するルートを目指すのがわかりやすいでしょう。
うっかり55万円・10万円になってしまうケース
条件を一つでも落とすと控除額が下がります。よくある失敗パターンを確認しておきましょう。
| ケース | どうなる? |
|---|---|
| 複式簿記で記帳し、期限内に紙で提出した | 55万円(e-Taxでも優良電子帳簿でもないため) |
| e-Taxで送ったが、3月15日を過ぎていた | 期限内申告の条件を満たさず、55万円・65万円は受けられない(10万円) |
| 簡易な帳簿(単式簿記)だけつけていた | 10万円 |
| 決算書を画像データで送信した | e-Taxの条件を満たさない |
e-Taxで確定申告する方法
e-Tax(イータックス)は、国税庁の「国税電子申告・納税システム」のことです。自宅からインターネットで申告書を提出できます。
用意するもの
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」からマイナンバーカードを使って送信する場合、必要なものは次のとおりです。
- スマホ・タブレット・パソコン:スマホで送信する場合はマイナンバーカードの読み取りに対応した機種が必要。パソコンの場合は、読み取り対応のスマホかICカードリーダライタを使う
- マイナポータルアプリ:マイナンバーカードで送信するために必要
- マイナンバーカード
- 2種類のパスワード:利用者証明用電子証明書(数字4桁)と署名用電子証明書(英数字6〜16文字)
電子証明書の有効期限は、年齢に関係なく発行から5回目の誕生日までです。期限が切れているとe-Taxで送信できないため、申告シーズン前に確認しておきましょう。
「ID・パスワード方式」は新規発行が停止
以前は、マイナンバーカードがなくても税務署で発行されるIDとパスワードでe-Taxを使う「ID・パスワード方式」がありました。しかし国税庁は、2025年10月1日からID・パスワードの新規発行を取りやめています。すでに届出をしている人は引き続き利用できますが、今後の扱いは改めて案内される予定とされています。これからe-Taxを始める人は、マイナンバーカード方式を前提に準備しましょう。
e-Taxで提出する3つのルート
- 確定申告書等作成コーナー(国税庁サイト):画面の案内に沿って入力し、そのままe-Taxで送信。決算書(青色申告決算書)も作成できる
- e-Tax対応の会計ソフト:日々の帳簿づけから決算書・申告書の作成、e-Tax送信まで一つのソフトで進められるものがある。対応状況や手順は各社の公式サイトで確認を
- e-Taxソフト(国税庁):国税庁が提供する専用ソフト。上級者向け
フリーランス1年目なら、帳簿づけは会計ソフト、提出は会計ソフトか作成コーナーから、という組み合わせが手間を減らしやすい方法です。
作成から送信までの流れ
- 1年間の取引を複式簿記で記帳する(会計ソフトに入力)
- 貸借対照表・損益計算書(青色申告決算書)を作成する
- 確定申告書を作成し、控除などを入力する
- マイナンバーカードを読み取り、e-Taxで送信する(決算書も一緒にデータで送る)
- 受信通知(送信が受け付けられた記録)を確認・保存する
- 納税がある場合は期限までに納付する
e-Taxで申告するその他のメリット
65万円控除以外にも、国税庁はe-Taxのメリットとして次のような点を挙げています。
- 確定申告期間中は24時間送信できる(メンテナンス時間を除く)
- 還付が早い:自宅からe-Taxで提出した還付申告は3週間程度で還付(書面提出の場合は1か月〜1か月半程度)
- 添付書類の省略:源泉徴収票や生命保険料控除証明書などは、内容を入力して送信すれば提出・提示が不要(ただし法定申告期限等から5年間は提出を求められることがある)
- マイナポータル連携:控除証明書などのデータを申告書に自動入力できる
取引先から報酬を源泉徴収されているフリーランスは、税金が戻ってくる(還付)ケースもあります。還付が早いのは資金繰りの面でもうれしいポイントです。
令和9年分(2027年分)以後は制度が変わる予定
令和8年度税制改正により、令和9年分以後の所得税から青色申告特別控除が見直される予定です。財務省「令和8年度税制改正の大綱」と国税庁の案内資料で示されている主な内容は次のとおりです。
| 区分 | 現行(令和8年分まで) | 令和9年分以後 |
|---|---|---|
| 複式簿記+期限内申告 | 55万円(紙提出でも可) | e-Taxでの提出が要件に加わり、65万円 |
| 上記+優良な電子帳簿 | 65万円(e-Taxでも可) | 75万円(e-Taxに加えて優良な電子帳簿などの要件が必要) |
| 簡易簿記 | 10万円 | 前々年分の事業所得の収入金額が1,000万円を超える人は対象外 |
ポイントは、改正後は65万円控除を受けるのにe-Taxが必須になり、さらに上乗せの75万円控除には、請求書データ等との自動連携や訂正・削除履歴の記録など、一定の要件を満たす優良な電子帳簿が求められることです。
なお、2027年2〜3月に行う「令和8年分」の確定申告は、現行の65万円・55万円・10万円の制度で申告します。新制度が関係するのは、2028年に申告する令和9年分からです。いまのうちにマイナンバーカードと会計ソフトでのe-Tax提出に慣れておくと、改正後もスムーズに移行できます。
1年目のフリーランスがやることチェックリスト
- 青色申告承認申請書を期限内に提出したか確認する
- 会計ソフトを選び、事業用の取引を複式簿記で記帳する(経費の考え方はフリーランスエンジニアの経費一覧も参考に)
- マイナンバーカードと電子証明書の有効期限、2種類のパスワードを確認する
- 手持ちのスマホがマイナンバーカードの読み取りに対応しているか確認する(非対応ならICカードリーダライタを用意)
- 決算書(貸借対照表・損益計算書)を作成し、申告書と一緒にe-Taxで送信する
- 3月15日より前、できれば2月中に送信を終える
まとめ
- 青色申告特別控除は条件によって65万円・55万円・10万円の3段階
- 現行制度の65万円控除は「複式簿記+決算書添付+期限内申告」に加え、「e-Tax提出」か「優良な電子帳簿保存」が必要
- 紙で出すと55万円、期限を過ぎると10万円になってしまう
- e-Taxはマイナンバーカード方式が基本。ID・パスワードは2025年10月1日から新規発行停止
- e-Taxなら還付が3週間程度と早く、源泉徴収票などの添付も省略できる
- 令和9年分以後は65万円控除にe-Taxが必須となり、優良な電子帳簿で75万円になる予定
参考にした公式情報
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
- 国税庁「青色申告特別控除の見直し」案内資料(PDF)
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 国税庁「e-Taxの利用方法」
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー」で利用するID・パスワードの新規発行停止について(PDF)
- 国税庁「所得税などの申告は、e-Taxをご利用ください」
- 国税庁 e-Taxの案内資料(還付期間の目安、PDF)
※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。最新情報は公式サイトでご確認ください。個別の判断は税理士や専門家にご相談ください。
