国民健康保険が高い|フリーランスが取れる対策と2026年度の上限額

会社を辞めてフリーランスになり、最初に届いた国民健康保険料の通知を見て「会社員のときより高い!」と驚く人は少なくありません。会社員時代は保険料の半分を会社が負担してくれていましたが、国民健康保険(国保)は全額が自分の負担です。しかも保険料は前年の所得をもとに計算されるため、会社員時代に収入が多かった人ほど、独立1年目の負担が重くなりがちです。

この記事では、国保の保険料がどう決まるのかをかみくだいて説明したうえで、フリーランスが取れる現実的な対策を、厚生労働省・協会けんぽ・国税庁・自治体の公式情報をもとに整理します。

結論:国保の保険料は「前年の所得」で決まります。退職直後は①任意継続・②国保・③家族の扶養を比べて選び、会社都合などで辞めた人は国保の「非自発的失業者の軽減」を必ず確認しましょう。独立後は、経費の計上や青色申告特別控除で所得を正しく小さくすることが、そのまま保険料の抑制につながります。払った保険料は全額が社会保険料控除の対象です。

国民健康保険が「高い」と感じる3つの理由

1. 会社負担がなくなり、全額自己負担になる

会社員の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)は、保険料を会社と本人で半分ずつ負担する仕組みです。国保にはこの会社負担がないため、同じくらいの所得でも本人の支払額が大きく見えます。

2. 前年の所得で計算されるため、独立1年目にずれが出る

国保の所得割は、前年中の総所得金額等から基礎控除(43万円)を差し引いた額をもとに計算します(新宿区の説明より。合計所得金額2,400万円以下の場合)。会社員時代の給与所得が基準になるので、独立して売上がまだ少ない年でも、高い保険料の通知が来ることがあります。

3. 世帯の人数でも保険料が増える

国保の保険料は、所得に応じた「所得割」に加えて、加入者1人ごとにかかる「均等割」などを組み合わせて計算されます(自治体によって計算方式が異なります)。家族も国保に入る場合、その人数分の負担が加わります。

国保の保険料の決まり方と上限額(2026年度)

国保の保険料は、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳の人)に、2026年度(令和8年度)からは子ども・子育て支援金分が新たに加わりました。それぞれに年間の上限額(賦課限度額)があります。横浜市が公表している令和8年度の制度改正の内容は次のとおりです。

区分令和7年度令和8年度
医療分66万円67万円
後期高齢者支援金分26万円26万円
介護分(40〜64歳)17万円17万円
子ども・子育て支援金分—3万円(新設)

上の表を合計すると、令和8年度の上限は年間113万円(40〜64歳の介護分を含む場合)です。料率や均等割の金額、上限額は自治体ごとに条例で決まるため、正確な金額はお住まいの市区町村のページで確認してください。

保険料は「市区町村・世帯構成・年齢・前年所得」で大きく変わります。ネット上の試算はあくまで目安なので、心配な場合は市区町村の国保窓口で試算してもらうのが確実です。

退職直後の対策:任意継続・国保・家族の扶養を比べる

退職後の健康保険には、主に3つの選択肢があります。厚生労働省(宮崎労働局)の案内をもとに整理すると次のとおりです。

選択肢主な条件・期限保険料の考え方
任意継続(会社の健康保険を続ける)退職までに被保険者期間が2か月以上。退職後20日以内に手続き。原則として最長2年間全額自己負担(会社負担分も自分で払う)
国民健康保険退職後、通常14日以内に市区町村へ届け出前年所得などをもとに市区町村が計算
家族の健康保険の被扶養者主に家族に生計を維持されていること。年間収入130万円未満などの目安あり本人の保険料負担なし

任意継続には「上限」がある

協会けんぽの任意継続では、保険料の計算に使う標準報酬月額が「退職時の標準報酬月額」と「協会けんぽ全体の平均をもとにした額」の少ないほうになります。令和8年度の上限は32万円です。そのため、会社員時代の給与が高かった人は、国保より任意継続のほうが安くなるケースがあります。ただし保険料率は都道府県支部ごとに違い、健康保険組合の場合はルールが組合ごとに異なります。

比べ方のコツ

  • 会社の健康保険(協会けんぽ支部や健保組合)に、任意継続の月額保険料を確認する
  • 市区町村の国保窓口で、前年所得をもとにした国保の見込み額を聞く
  • 家族の扶養に入れるか(収入見込み・生計維持の状況)を、家族の勤務先の健康保険に確認する
  • 任意継続は退職後20日以内という短い期限があるので、退職前に比較しておく

会社都合などで辞めた人は「非自発的失業者の軽減」を確認

倒産・解雇・雇い止めなどで離職した人は、国保の保険料が大きく下がる可能性があります。新宿区の案内によると、条件と内容は次のとおりです。

  • 離職日時点で65歳未満であること
  • ハローワークで雇用保険の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」と認められていること(雇用保険受給資格者証の離職理由コードで判断)
  • 軽減内容:本人の前年の給与所得を100分の30として保険料を計算する(給与所得以外は対象外)
  • 期間:離職日の翌日が属する月から、その翌年度末まで
  • 手続き:雇用保険受給資格者証などを持って市区町村で申請(申請しないと適用されない)

自己都合退職でフリーランスになる人は通常この軽減の対象になりませんが、契約期間満了など離職理由によっては該当する場合があります。受給資格者証の離職理由コードを確認してみましょう。

独立後の対策:所得を「正しく」小さくする

国保の所得割は所得をもとに計算されるので、売上から経費を差し引いた所得を正しく計算することが、保険料を抑える基本になります。

経費をもれなく計上する

パソコン、ソフトウェア、通信費、在宅で仕事をする場合の家賃・電気代の事業分など、仕事に必要な支出は経費になります。計上もれがあると、その分だけ所得が多く計算され、所得税・住民税だけでなく国保の保険料も高くなります。詳しくは「フリーランスエンジニアの経費一覧」や「家事按分のやり方」をご覧ください。

青色申告特別控除を使う

青色申告特別控除は所得から差し引かれるため、国保の所得割の計算にも影響します。青色申告を始めるには事前の申請が必要です。「青色申告と白色申告の違い」「青色申告承認申請書の期限と書き方」「e-Taxで65万円控除を受ける条件」もあわせて確認してください。

保険料を下げる目的で、仕事と関係のない支出を経費にするのはNGです。税務調査で否認されると、追加の税金に加えて保険料も再計算される可能性があります。

その他に確認したい制度

低所得世帯の均等割・平等割の軽減

世帯の所得が一定以下の場合、均等割(・平等割)が7割・5割・2割軽減されます(厚生労働省)。前年の所得が確定申告などで把握されていることが前提になるため、所得が少ない年でも申告をしておくことが大切です。

未就学児の均等割の軽減

2022年4月から、未就学児の均等割額は5割が軽減されています。申請は不要です(中央区の案内より)。

災害などによる減免・徴収猶予

災害など特別な事情で保険料の支払いが難しくなった場合、申請によって減免や徴収猶予を受けられることがあります。内容は自治体ごとに異なるので、払えないまま放置せず、早めに市区町村に相談しましょう。

国民健康保険組合という選択肢

国保には、市区町村が運営するもののほかに、同じ業種の人が加入する「国民健康保険組合」があります。業種によっては加入できる組合があり、保険料の決まり方が市区町村の国保と異なることがあります。加入条件や保険料は組合ごとに違うため、加入を考える場合は組合の公式情報で確認してください。

払った国保の保険料は「社会保険料控除」で全額控除できる

国税庁によると、国民健康保険の保険料(または国民健康保険税)は社会保険料控除の対象で、その年に実際に支払った金額の全額を所得から差し引けます。生計を一にする配偶者や親族の分を自分が支払った場合も、自分の控除にできます。確定申告のときに入力もれがないよう、納付額がわかる通知や領収書を保管しておきましょう。申告のスケジュールは「フリーランスの確定申告はいつからいつまで?」で解説しています。

まとめ

  • 国保の保険料は前年の所得で決まるため、独立1年目は高く感じやすい
  • 2026年度から子ども・子育て支援金分が加わり、国の基準での上限は年113万円(介護分を含む場合)
  • 退職直後は任意継続・国保・家族の扶養を比べる。任意継続は退職後20日以内に手続き
  • 会社都合などの離職なら「非自発的失業者の軽減」で前年給与所得を30/100として計算できる場合がある
  • 独立後は経費の計上と青色申告特別控除で所得を正しく計算することが保険料対策の基本
  • 払った保険料は全額が社会保険料控除の対象

参考にした公式情報

※本記事は2026年10月時点の情報をもとに作成しています。最新情報は公式サイトでご確認ください。個別の判断は税理士や専門家にご相談ください。

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